第 10 条関係

第 10 条 この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。

第 10 条関係

<使用者の意義>
 「使用者」とは本法各条の義務についての履行の責任者をいい、その認定は部長、課長等の形式にとらわれることなく各事業において、本法各条の義務について実質的に一定の権限を与えられているか否かによるが、かかる権限が与えられておらず、単に上司の命令の伝達者にすぎぬ場合は使用者とはみなされないこと。〔昭和 22・9・22 発基第 17 号〕

<下請負人>
 下請負人がその雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するとともに、当該業務を自己の業務として相手方(注文主)から独立して処理するものである限り、注文主と請負関係にあると認められるから、自然人である下請負人が、たとえ作業に従事することがあっても、法第 9 条の労働者ではなく、第 10 条にいう事業主である。〔昭和 23・1・9 基発第 14 号、昭和 63・3・14 基発第 150 号〕

<出向の場合>
 出向とは、出向元と何らかの労働関係を保ちながら、出向先との聞において新たな労働契約関係に基づき相当期間継続的に勤務する形態であり、出向元との関係から在籍型出向と移籍型出向とに分類される。
(1)  在籍型出向
 在籍型出向は、出向先と出向労働者との聞に出向元から委ねられた指揮命令関係ではなく、労働契約関係及びこれに基づく指揮命令関係がある形態である。出向先と出向労働者との聞に労働契約関係が存するか否かは、出向・派遣という名称によることなく出向先と労働者との間の労働関係の実態により、出向先が出向労働者に対する指揮命令権を有していることに加え、出向先が賃金の全部又は一部の支払いをすること、出向先の就業規則の適用があること、出向先が独自に出向労働者の労働条件を変更することがあること、出向先において社会・労働保険へ加入していること等総合的に勘案して判断すること。
 在籍型出向の出向労働者については、出向元及び出向先の双方とそれぞれ労働契約関係があるので、出向元及び出向先に対しては、それぞれ労働契約関係が存する限度で労働基準法等の適用がある。すなわち、出向元、出向先及び出向労働者三者間の取決めによって定められた権限と責任に応じて出向元の使用者又は出向先の使用者が出向労働者について労働基準法等における使用者としての責任を負うものである。この点については、昭和 59 年 10 月 18 日付け労働基準法研究会報告「派遣、出向等複雑な労働関係に対する労働基準法等の適用について」中「3 いわゆる出向型に対する労働基準法等の適用関係」を参照のこと。
(2)  移籍型出向
 移籍型出向は、出向先との間にのみ労働契約関係がある形態であり、出向元と出向労働者との労働契約関係は終了している。移籍型出向の出向労働者については、出向先とのみ労働契約関係があるので、出向先についてのみ労働基準法等の適用がある。〔昭和 61・6・6 基発第 333 号〕

<高分子原料開発研究組合>
問 当局管内に下記のとおり、高分子原料開発研究組合が設立されたが、この組合が労働基準法及び労働者災害補償保険法の適用に関し、次のとおり疑義を生じましたので何分の御教示を賜りたく稟伺致します。
1 研究事業に従事する者は、組合より賃金等の報酬を受けないので、組合との関係上、本法にいう労働者と認め難く、よって労働基準法の適用はないものと解してよいか。
2 研究事業に従事する者と、その者の所属する会社との間には労働関係が存在し、組合の研究業務を直接指揮監督する運転部長、運営委員長を各会社の使用者のために行為する者と看做して労働基準法第 8 条第 12 号の研究の事業として適用のあるものと解してよいか。
3 労働者災害補償保険法上、使用者は各々の会社を使用者として労働者は出張中の者として取り扱ってよいか、又は組合を 1 つの単位の事業と解してよいか。

1 事業の概要
(1)  当該組合は、22 社が資金と自己会社の技師(以下「運転部員」という。)を出向させてK市に施設してアセチレン、エチレン等高分子原料の開発に必要な試験研究及びこれに関連する工業化の研究を共同事業として実施するものである。
(2)  この事業に必要な経費は国の補助金と各組合員(会社)が平等に負担する分担金によりなっている。経費の支出は施設費、研究費、事務局の給料負担金である。
(3)  設備は、ボイラー、圧力容器、ポンプ、冷凍機、化学実験装置及び諸計器類であり、所有関係は組合員の共有財産である。
2 事業の組織、運営方法
(1)  組織は次頁〔編注-略〕のとおり常置機関としては運営委員長の指揮下(運営委員長は事実上は非常勤であるので、日常の指揮監督は運転部長が行なうが、形式上責任態勢にある。)に運転部と事務局とがあり、非常置機関として財務委員会と技術委員会よりなる。
(2)  理事会は 22 社の代表者により構成されるが、代表者のため参集困難の事情にあり、理事会の代行機関として運営委員会が業務を処理する。運営委員長は理事会で決定指名されたものである。
 運転部は運転部員によって運営され、運転部員の指揮監督は部員の互選による運転部長が行うが、運転部長は運営委員長の指揮の下にある。
 設備の運転は運転部員が行うが、ボイラー、ポンプの維持はT㈱より出向する作業員によって行なわれる。
3 運転部員、事務局員等の身分、待遇、労働条件
(1)  運転部員は各社より出向形式にて常態的に研究事業に従事し待遇、労働条件は本項(3) 記載の事実を除いて、その会社の労働協約、就業規則によって決定され労働の記録は組合で管理し、その記録を組合より各社に送付し、賃金計算をしその会社より直接運転部員に支払う。
 各会社より出向した運転部員について不適当と認められた者については組合より会社あて代りの部員の出向を要請するが指名は行わない。
 組合として運転部員の採用、解雇は行わない。
(2)  事務局員、ボイラー、ポンプの維持員については、運転部員と同様管理は組合で行うが記録はT㈱に送付し、T㈱の就業規則に基き、賃金はT㈱より支払われるが、事務局員の給料相当額は組合経費よりT㈱に還元決済される。
 事務局員に関する社会保険はT㈱にて一切処理され、組合は全然関係しない。
(3)  組合内における始業、終業、休憩、休日等の労働条件は運転部長の監督の下に処理される(就業規則作成の予定である)。
 年次有給休暇に関する諸条件は各所属会社の規定による。但し取得についての手続のみ運転部長の承認を要する。

答 1  労働基準法関係
(1)  運転部員、作業員及び事務局員(以下「労働者」という。)は、作業の具体的遂行、始業、終業、休憩その他の事項について高分子原料開発研究組合(以下「組合」という。)の指揮命令をうけており、その限度で、労働者と組合との間に労働関係が存在するが、反面、解雇の権限は出向元の会社に留保されており、また、賃金は出向元の会社から支払われているから、その限度で、出向元の会社との間にも労働関係が存在する。この場合において労働基準法(以下「法」という。)は、当該使用者について、労働関係の存在する限度で適用があるということになるが、具体的な関係条項の適用については、別紙によられたい。
(2)  組合は、法第 8 条第 12 号に該当する。
2 労働者災害補償保険法関係
 労働者は組合に係る保険関係により取り扱うこととし、組合から保険加入の申込があった場合は承諾されたい。この場合において、保険料及び平均賃金の算定については、出向元の会社が当該労働者に支払った賃金により行なうことになるが、その取扱いに当っては、昭和 35 年 11 月 2 日付基発第 932 号通達の趣旨により円滑を期せられたい。

別 紙
1 法第 24 条関係
 労働者の賃金は、出向元の会社において支払われているが、勤務場所と賃金支払場所が異ることは、本条に規定する一定期日払の原則の履行を困難にする場合も考えられるので、組合、会社間の距離、交通に要する時間等よりみてこの原則の違反を生ずることのないよう、実情に即して指導されたい。
 なお、本条の協約及び協定は、賃金支払者たる出向元の会社との間に締結されれば足りる。
2 法第 32 条、第 33 条、第 34 条、第 35 条、第 36 条及び第 39 条関係
 組合は、労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇に関するこれらの規定の履行義務を有する。
 なお、法第 36 条の規定に基づく協定は、組合との間に締結されなければならない。
3 第 5 章関係
 組合は、安全及び衛生に関する本章の規定の履行義務を有する。
4 第 8 章関係
 組合は、本章の規定に基づく災害補償義務を有する。
5 第 9 章関係
 就業規則に関する本章の諸規定の義務の履行は、組合又は出向元の会社が、それぞれが権限を有する事項の限度において、当該事項について行なわなければならない。
6  第 107 条及び第 108 条関係
 これらの規定に基づく労働者名簿及び賃金台帳の調製等の義務は、組合及び出向元の会社のそれぞれにある。〔昭和 35・11・18 基収第 4901 号の 2〕

<事務代理の懈怠と罰則の適用について>
 法令の規定により事業主等に申請等が義務づけられている場合において、事務代理の委任を受けた社会保険労務士がその懈怠により当該申請等を行わなかった場合には、当該社会保険労務士は、労働基準法第 10 条にいう「使用者」及び各法令の両罰規定にいう「代理人、使用人その他の従業者」に該当するものであるので、当該社会保険労務士を当該申請等の義務違反の行為者として各法令の罰則規定及び両罰規定に基づきその責任を問い得るものであること。
 また、この場合、事業主等に対しては、事業主等が社会保険労務土に必要な情報を与える等申請等をし得る条件を整備していれば、通常は、必要な注意義務を尽くしているものとして免責されるものと考えられるが、そのように必要な注意義務を尽くしたものと認められない場合には、当該両罰規定に基づき事業主等の責任をも問い得るものであること。〔昭和 62・3・26 基発第 169 号〕

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