第 9 条関係(2 施設等に収容される者)

2 施設等に収容される者

 <受刑者>
問 土木請負業者が刑務所より受刑者の労務供給を受け、下記により公共事業である河川工事を営む場合受刑者に対しても本法の適用があるか。

 一、報酬は請負業者より直接刑務所に納入するものであること。
 二、看守は受刑者の逃亡を監視するのみであること。
 三、労働関係に関しては請負業者が監視するものであること。

答 受刑者は法第 9 条の労働者に該当しないから、質疑の場合にも本法の適用はない。〔昭和 23・3・24 基発第 498 号〕

<家庭裁判所から補導を委託された非行少年>
問 当局管内の下記事業場において、少年法により補導委託中に就業した非行少年の災害が発生しましたが、労働基準法第 9 条の労働者として取扱ってよいか、いささか疑義がありますので御教示いただきたくりん伺いたします。

事業場名
 ○○市○○町○○番地
H産業有限会社
(労災保険成立記号番号○○)
被災者名
T(昭和 20 年 7 月 25 日生)
裁判所名  T家庭裁判所
補導委託先
 ○○市○○町 O葡萄園
        園長 O
事件の概要及び当局の意見
一、事件の端緒
 昭和 39 年 10 月 1 日○○市○○町○○番地H産業有限会社(代表K)において午前 10 時頃、果物箱詰め等に使用する木毛を作るため、木毛機の作業をしていたT(満 19 才)が材料となる木を取換えようとした際、左手をすべらして木毛機の刃に接触し、左中指を第 1 指関節部から切断、同母指および示指に挫滅創を負い、土浦市内N病院に入院加療後 11 月 10 日退院したが、同人の木毛工場における就業の特殊性から、同人が労働基準法第 9 条にいう労働者であるか否かという疑義が生じたものである。
二、Tの就業事情
(1) TはY乳業店に住込み、牛乳配達の仕事に従事していたが、昭和 38 年 4 月から同 39 年 5 月までの間に、無免許運転、速度違反等の道路交通法違反 4 回を重ねた結果、本来 5 月 22 日の違反により運転停止 70 日の処分を受けた上T家庭裁判所に送致されて審判を受け、非行少年として少年法第 25 条によりT家裁調査官の試験観察に付せられ、同条第 2 項第 3 号にもとづいて、 9 月 2 日
 補導委託先
  ○○市○○町O葡萄園
 園長 O
方に委託されたものである。
(2) H産業の木毛工場において、Tの災害が発生した当時、O葡萄園においては、T少年外 18 名(いずれも 18 才又は 19 才)をT家裁から補導を委託されており、調査官又は事務官が少年を同園に委託する際の付添いの来所、および月 1 回定期の試験観察のための来所のもとに管理していたが、うち 7 名の少年は同園内の作業に従事し、T少年等の 11 名は園外の工場、商店、食堂等の一般事業場において就業していた。当時、同園より通勤者は 2 名、園外における住込者は 10 名であった。
 T家裁からは同園に対して、少年 1 人 1 日につき 265 円の割で委託費が給付されている。少年たちの罪状性質等によって園内生活および園内作業に限られる者については、あらかじめ委託の際に付添いの調査官が特に指示している。
 集団生活上の規律と統制に服するように、園長夫妻が指導監督はしているが、生活場所、作業場所ともに拘禁的ではない。その他の少年については、T家裁では、園外の適宜の事業場に通勤あるいは住込みで勤務することを認めている。
 委託費は委託先における諸事務費と少年たちの食費等を含んでいるが、園外の事業場に住込む場合であっても、園内作業者および通勤者と同様に委託先(O葡萄園)に支給され、委託費取扱上問題とはしていないようである。
(3) 園外勤務の場合には、主として園長と面識ある事業場の事業主との間に、あらかじめ求人又は求職について話があり、少年受託の際に園長から就業したい職種等の希望についてもきき、園長が頼まれている事業場を紹介するという手続きで通勤又は住込みにより就業した者が多い。
 T少年の場合は前職が牛乳配達の仕事であったので、同種の職場を希望したが適当な事業場が見当らず、さきに園長が依頼を受けていた木毛工場の仕事をする気になり、 9 月 11 日、同様委託されていたE少年と 2 人で同工場に行き就業したという。
(4) 9 月 11 日T少年等がH産業有限会社の木毛工場(一般労働者数 男 6 女 2)に就業した際には、事業主Hから、労働時間については他の労働者と同様に午前 8 時から午後 5 時までであり、休憩は、 12 時より 40 分間と午後 3 時から 20 分間であること。休日は毎日曜日であること、また少年たちには昼食を事業場から給与すること、および木毛製造作業の仕方について指示を与えられている。(当工場には木毛機が 4 台設備されている。)その際、賃金額については事業場側から少年たちに明示していないが、その他の労働条件および作業仕方については、昼食が出ることを除き、他の一般労働者と変わりなかった。
 なお、E少年は当日から工場内外の雑役の仕事に従事した。
三、報酬の支払いについて
(1) 少年補導委託先であるO葡萄園では、T家裁調査官から少年たちには金を所持させないよう指示されているので、委託先から通勤先には、賃金支払日には直接少年に手交しないよう連絡している。
 通勤先には、支払日に受託者O自身赴いて賃金を受領し、H産業の場合には、連記式賃金台帳に受託者自身の領収印を押印し受取っている。
(2) 少年たちが通勤で稼働した賃金については、O葡萄園において保管し、少年たちが衣料品等の購入を希望する場合には、これを購入してやり、住込者の場合には事業主から連絡を受け、必要な限りこれを承認し、購入してもらうようにしている。
 通勤者住込者ともに同園から出所する際には、これら購入品の金額を除いた賃金保管額全部は本人たちに支払われることになっている。
(3) T少年の場合、H産業事業主又は受託者Oから賃金額については明示されなかったが、Oの妻や木毛工場における他の労働者たちの話を総合して、昼食付き 1 日 400 円であることがわかったという。
 また、本人は入院後、Oから 9 月分賃金として 6000 円を手交されている。同工場における賃金水準は次のとおりである。
女子(雑 役)420 円
男子(経験者)750 ~ 800 円
(いずれも食事は付かず)
四、勤務の終了について
 少年の補導のための試験観察期間は、3 カ月ないし 9 カ月間で、少年たちが家裁に帰り、最終の審判(第 3 審判)を受けるまで、委託期間は最長 9 カ月、最短 1 カ月程度となっている。
 少年たちの罪状および第 2 審判後の経過により、委託期間の大体の目安は推定されるとしても、調査官が来て家裁に連れてもどる日がきまるのは、具体的には受託者も本人たちにもわからない場合が多い。
 したがって、全体として短期の約束で就業するが退職は突然として行なわれることが多い。
 また、商店又は飲食店等に勤務した少年が、客や他の雇人に乱暴を行なった場合等は、解雇に関する労働基準法の規定によることなく受託者に帰されることが多いという。
 この点で、就業の開始の際は、ある制限された範囲において自由な面があるが、勤務の終了の場合は、大体において他人決定的とみられる。
五、委託先(O葡萄園)における作業について
 家裁から補導を委託された少年のうち、外部事業場に勤務させないように指示された者、外部に適当な職場が見当らない者および外部に勤務することを欲しない者は、O葡萄園において、ぶどう、なし等果樹の植栽、手入又は、取入作業等を園長の指揮監督のもとに行なわなければならない。
 その共同生活と作業のうちに、勤労精神の育成、家庭的ふん囲気による差別意識の排除、円滑な社会復帰の準備のため補導と観察が行なわれるが、その作業は家庭裁判所が承認している一種の無償労働である。
 当O葡萄園に対しては、内外勤務の差別なく、家裁から委託費が給付されているが、全部同園の食事費、事務費等に充当されることになっており、労働の対償と認められるものは、少年たちに支払われていない上、家裁もこの点については何等関与するところがない。
 なお、同園では常時一般労働者を使用していない。
六、当局の意見
(1) 委託先(O葡萄園)における作業者について
 O葡萄園における保護少年たちに対する管理指導は、その労働の上にだけでなく、全生活に及んでおり、園内における作業は、国の機関である家庭裁判所の承認のもとに、補導の過程の一環として実施された一種の無償労働と考えられ、その当事者は労働基準法上の労働関係にあるものとは解されない。
(2) 委託先から外部の事業場に勤務した者について
 職種に関する少年たちの希望を考慮しているが、受託者は一種の労務供給的なあっせんを行なって就業を開始させている。少年たちが労働基準法上の労働者に該当するか否かについては次の点が問題となる。
イ 労働基準法第 8 条の事業又は事務所に使用される者であるかどうか。
 本件に関して、少年たちは、いずれも同条に該当する事業場に勤務していることが認められる。また、他の一般労働者とほぼ同じ労働条件で、同じ職場において、使用者の管理監督のもとに、普通の労働に従事している点は、一般労働者と区別されるところはないと考えられる。
ロ 使用者から直接賃金を支払われる者であるか。
 本件の場合、賃金(報酬)としては、労働の対価たるものが、授受されているが、使用者が労働者に直接支払っているとはいうことができない。
 金銭を所持することが逃亡等の有力な手段となり勝ちであることにかんがみ、家裁調査官の指示に従い、受託者あるいは事業主の手もとに積立てておくものであるが、これは貯蓄金管理の違反に該当することは勿論、中間搾取等の原因にもなりかねない。
 しかし、事業場における労働者と使用者との労働関係の存立を妨げる条件であるとは思われないので、他の法律によって特に定められていない限り、賃金支払の仕方をできるだけ合理的に改善して、労働基準法上要求されている条件に近づけてゆくべきと考えられる。
 家裁調査官による観察中および歩道を委託された保護少年は、もともと、囚人又は労役場の収容者のように特別の国家権力による強制的な労働に従事するものでなく、また、保護処分の結果、少年院に収容された矯生教育中の少年とも異りこれにまだ至らない保護の段階にある。
 したがって、一般事業場において一般労働者とほぼ同じ条件で労働する少年は、労働基準法上の労働者であると解することが妥当と認められるだけでなく、労働基準法に規定する最低基準によって保護を与えることが必要であると思料せられる。

答 照会のあった件について、左記のとおり回答する。
 なお、本件については、最高裁判所事務総局家庭局第 3 課とも打ち合せ済みであるので念のため申し添える。

一、少年が、少年法第 25 条第 2 項第 3 号の規定により補導を委託された施設、団体又は個人(以下「受託者」という。)の施設内において作業に就く場合において、当該作業がもっら生活指導又は職業補導の一環として行なわれている場合には、一般に労働基準法の適用はないものと解される。
二、少年が、受託者の施設外の一般民間事業場において就労する場合には、労働基準法第 9 条の要件を満たす限り労働基準法上の労働者であると解される。〔昭和 40・5・20 基収第 445 号〕

<らい療養所におけるらい患者>
問 らい療養所におけるらい患者は、左記の理由により法の適用はないものと思料するが如何。

 国立らい療養所の軽症患者に対しては、健康保持並びに患者療養生活の利便上軽作業を負荷し、これに対して一定の僅少なる金を与えているのであるが、これをもって直ちに基準法による労働者なりとする見解は誤りであると考えられる。即ち
(1) 労働基準法第 9 条において労働者とは事業場に使用される者で賃金を受けるものと規定されているが、らい患者はらい予防法によって収容を受け専ら治療に専念すべきものであって、所謂労働契約によって使用されるものではなく、又負荷する作業は精神慰安を目的としたものであって療養所の経営には何ら本質的の影響をもつものではない。
(2) 療養所におけるらい患者の治療費は勿論のこと、その他衣食住に要する一切の費用は国庫の負担となっているので、作業賃が直接患者の生活権に影響を与えるものではない。

答 らい予防法によってらい療養所に収容されている患者は、らい療養所に使用される労働者ではないから労働基準法の適用はない。〔昭和 23・11・19 基収第 3846 号〕

<授産施設の作業員>
 左記の条件をすべて充たす授産施設の作業員(施設に使用される職員、指導員等を除く)は労働者とは、認められない。

一、授産施設の作業員の資格は原則として市町村長、社会福祉事務所長、民生委員等が保護を要する者と認める証明に基いて当該授産施設を利用せしめることによって生業を扶助されるものに限っているものであること。
二、授産施設においては、その作業員の出欠、作業時間、作業量等が作業員の自由であり、施設において指揮監督をすることがないものであること。特に各作業員の作業量が予約された日に完成されなかった場合にも、工賃の減額、作業品割当の停止、資格の剥奪等の制裁が課せられないものであること。なお作業に対する技術的指導及び製品に対する規格検査はここにいう指揮監督には含まれないものであること。
三、作業によって加工すべき品目については、作業員の技能を考慮して授産施設において割当てるものであっても差支えないが、同一品目の工賃は、作業員の技能により差別を設けず同額であること(但し、受註契約において製品の仕上り状況によって工賃に差別が設けられている場合は除く)。又、授産施設の場内で作業する場合と場外で作業する場合とによって工賃に差別を設けないものであること。
四、作業収入は、その全額を作業員に支払うものであること。但し、授産施設において補助材料等(ボタン、糸等)を負担した時は、材料購入に要した実費を控除した額を下るものでないこと。
五、授産施設の運転資金、人件費、備品費、営繕費その他の事務費、事業費又は固定資産の償却等の経費は、当該授産施設の負担においてなされるものであること。〔昭和 26・10・25 基収第 3821 号〕

<院外作業に従事する入院患者>
問 標題のことについて、下記 1 のごとき事案が発生したので調査したところ、その実態は下記 2 のとおりであり、関係者の意見は下記 3 のとおりでありますが、被災者が労働者であるか否かについては、下記 4 のとおり疑義を生じ、かつ、類似の形態で、いわゆる作業療法を実施している病院も多く、全国的なケースとも思料されるので、何分の御指示を賜わりたくりん伺いたします。

1 事件発生の端緒及び問題点
(1) 管内○○町所在、医療法人A病院(精神神経科、院長M)の入院患者、B(23 才)は、作業療法として同町所在㈱C製作所(製材木工、社長T)に出向作業中、昭和 41 年 2 月 19 日、自動プレーナーの刃部に触れ、左前腕、左手部に受傷(左前腕挫創、左手複雑骨折)、同町H病院において治療、同年 3 月 31 日治ゆした(10 級準用障害残存)。
(2) ㈱C製作所社長Tは、多少疑問はもっていたが、原則的には被災者と会社の間に雇用関係はないものと考え処理していたものであるが、その後被災者家族等の発言もあり、疑問を深め所轄労働基準監督署労災係に相談の上、労働者であるか否かの判定を求める意味をも含めて、障害補償給付請求の手続をとったものである。
2 調査結果(昭和 42 年 5 月 8 日)
(1) 当該病院における入院患者は約 160 名であるが、その内 120 ~ 130 名の患者について作業療法として、病院内で午前中軽作業(ビニール籠あみ、ビニール袋詰等)に従事させているが、その中でも特に病状の軽い患者について下記のとおり(調査日現在)院外の事業場に依頼し軽作業につかせている。
イ C製作所(製材木工) 3 名
ロ D工業(○○○下請) 2 名
ハ E金属(鉄工)    2 名
(2) 通勤は徒歩で午前 8 時病院を出発、午後 4 時 30 分帰院している。
(3) 作業内容の決定については、病院側としては、開放病棟看護主任をそれぞれの事業場に出向かせ、事業場側と話し合いの上決定させているが、単純作業、雑役等軽作業を主としている。その結果、作業予定患者にこれを説明し、本人が承知したものについて出向かせているものである。
(4) 病院側としては、月 2~3 回、事業場を前記看護主任が巡視し、患者の就労状況を観察したり、事業場側より状況を聴取したりしているが、その他の間については事業場に管理監督をまかせている実情である。
(5) 報酬について
イ 事業場側としては、病院側から依頼をうけて就労させているのであるが、単純雑役作業とはいえ、企業として多少なりともプラスとなっているので謝礼として日給計算で毎月 1 回病院側に支払っている。
ロ 金額については、患者はノータッチであり、病院側としても謝礼としてもらうものであるので、全く「志」だけということで話し合いされており、現在はC製作所では 1 人 1 日 150 円、その他の事業場では 200 円の支払いがなされている。
ハ 謝礼金については、病院側はこれを病院の会計には計上せず、前記病院内における作業に対する謝礼金とあわせて一括し、前記看護主任に別会計として管理せしめている。
ニ 謝礼金の使途としては、 1 週間に 2 回程度の踊り、書道、歌謡曲等の練習及び年 1~2 回の旅行並びに娯楽設備等のレクリェーション活動費用にあてられているほか、院内作業者のオヤツ代、院外作業者のオヤツ代りとして 1 人 1 日 100 円宛支給している。
(6) 備考
イ 今回のケースでは、社長Tは、雇用関係はないものと考えていたが、会社で就業中の事故であるので責任を感じ、災害発生時、見舞金として 10,000 円被災者の父親に渡している。
ロ 本件に関し、書面契約その他規定等は認められない。
3 関係者の意見
 関係機関について意見を聴取した結果は、次のとおりである。
(1) 岐阜県保険課
 ナイトホスピタル制は、治療指針においても作業療法の一環として認められているが、指導員又は、看護人がおおむね常時付添っていないものについては、原則的には作業療法とは認めがたい。
(2) 岐阜医科大学附属病院
 精神科患者の治療に際しては、ナイトホスピタル制を含めた作業療法を併用することが、最も効果的であることは学界の常識となっており、療法として行なわせる作業である限り、一般事業場で就労しても労働者とは考えていない。この場合、指導員等が常時患者に付添うことが望ましいが、採算的な面及び指導員等の絶対数の不足等よりみて、現状としては極めて困難であるが、この場合でも帰院後の治療と合せ相当の効果が認められている。
(3) 岐阜県精神衛生センター
 近年、患者数が逐年増加の傾向にあり、収容施設の増設では、これに追いつかない状況にあり、生産的作業に従事せしめる作業療法としては、一般事業場に依頼して実施せざるを得ない実状にある。
4 当局の見解
 本件類似の就労が、健康保険法第 43 条の 4 第 1 項並びに第 43 条の 6 第 1 項及びこれに基づく命令の規定にづく作業療法として実施されている限りにおいては、就労の場所、利用する施設、作業内容等が病院から依頼をうけた事業場によって提供されものであっても、一般的には患者と当該事業主との聞に使用従属関係は存しないものと解される。
 しかしながら、本件のごとく作業療法の一環として実施されているものであっても、当該患者の就労についての指導看護が事業主にゆだねられ、事業主は当該事業場に雇用する一般労働者とさしたる区別なく、当該患者を使用している場合は、患者と当該事業主との間には使用従属関係が認められると解されるが、当該患者の就労に対して支払われている本件の謝礼金は、前記のとおり実費弁償的性格のものであり、賃金と解することは適当でない。
 したがって、本件について、当該受傷患者を労働基準法第 9 条の労働者と解するについて疑義がある。

答 下記により判断されたい。

1 事業主が病院から委託をうけて病院のために治療目的で入院患者を作業に従事させる場合は、原則として労働基準法第 9 条の労働者(以下単に「労働者」という。)には該当しないが、労働者であるか否かについては形式的に判断することなく、実態に応じ、使用従属関係の有無を判断し、作業療法として適正なものであると否とを問わず、使用従属関係が認められる場合であって、それに基づく労働に対し対価が支払われているときには、労働者に該当すること。
2 次に掲げる事項のいずれかに該当する場合には、通常は事業主と患者との間に使用従属関係が認められること。
(1) 治療目的、治療方法等当該作業が医療上の作業療法であることが、病院から患者及び事業主に明示されておらず、事業主は、患者を当該事業場の他の労働者と区別することなく労働させているとき。
(2) 当該作業が治療目的を有するものであることが明示されている場合であっても、患者が従事する作業の種類、作業の方法及び作業の場所等作業の内容並びに就業時問、休憩、休日その他就業に関する事項の決定が、病院と事業主との間に治療目的に沿って具体的に行なわれておらず、これらの決定がすべて事業主にゆだねられており、事業主が患者の労働力を自由に使用しうるとき。
(3) (2)に掲げる作業の内容及び就業に関する事項の決定が、病院と事業主との間で具体的に行なわれている場合であっても、事業主が当該決定事項を順守せず、患者の従事する作業の種類、作業の方法、作業の場所等を変更し、又は決定された就業時間をこえて労働させるなど実態が(2)と同様であるとき。
3 次に掲げる事項のいずれかに該当する場合には、使用従属関係が認められるときが多いので、他の事項とあわせ総合的に判断すること。
(1) 事業主が、通常は上記 2 の(2)に掲げる事項を順守して患者に作業をさせている場合であっても、業務繁忙期等には、病院の承諾を得ることなく他の労働者と同様所定の就業時間を延長し、又は休日に労働させているとき。
(2) 昭和 36 年 10 月 27 日付け保発第 73 号厚生省保険局長通達「精神科の治療指針」によれば、作業指導員(病院の職員で一定の資格を有する者)は、常に患者とともに作業すべきことが定められている(同通達XIの 2 の(一)の(6))が、これら作業指導員による事業場内における患者に対する指導及び観察等が行なわれていないか又はその回数が少なく、そのため事実上患者に対する指揮監督が一切事業主にゆだねられていると認められるとき。
(3) 患者が、遅刻、早退、欠勤等就業に関する定めに反した場合、事業主から直接何らかの制裁をうけ、事実上事業主に対し出勤義務を負っていると認められるとき。
(4) 患者が、事業主に対し、作業上の瑕疵について責任を負い、又は一定の作業量の確保について義務を負っているとき。
(5) 労働の対価と認められる金品が支給されているとき。たとえば、謝礼と称していても、それが労働の提供のあった時間、日若しくは月又は出来高等に対して支払われるときはこれに該当すること。〔昭和 43・8・15   42 基収第 3650 号〕

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