第 6 条関係
( 中間搾取の排除)
第 6 条 何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。
第 6 条関係
<趣旨>
本条は、新憲法の個人の人格の尊重、基本的人権の確立の趣旨に則り、我園の労働関係に残存する封建的弊習たる親分子分の従属関係や労働者の人格を無視した賃金の頭ハネ等の絶滅を期するものである。労働関係の開始存続は、共に労働者又は労働組合と使用者との直接関係に於て、之を決定するのを理想とする。然し労務需給の状況により之が開始を悉く直接関係に期待することは不可能であるから、国は職業安定法及び船員職業安定法を設けて之が使宜の供与と弊害の取締りに当るのであるが、労働関係の存続について第三者が介在することは、弊害のみが多くてこれを必要とする事由は全くない。本条は、職業安定法及び船員職業安定法の規定する範囲よりも広く労働関係の開始についてのみならず、其の存続についても、第三者の介入することにより生ずる弊害を排除することを目的とするものである。〔昭和 23・3・2 基発第 381 号〕
<三者の関係>
本条の違反行為が成立するためには、「業として他人の就業に介入して利益を得る」第三者と「就業に介入」される労働関係の当事者、即ち使用者と被使用者の三者関係の存在が必要である。被使用者の中でも一の被使用者が、他の被使用者と使用者との労働関係に介在する場合には、本条違反を構成する。〔昭和 23・3・2 基発第 381 号〕
<何人もの範囲>
違反行為の主体は「他人の就業に介入して利益を得る」第三者であって、「何人も」とは本条の適用を受ける事業主に限定されず、個人、団体又は公人たると私人たるとを問わない。従って、公務員であっても、違反行為の主体となる。〔昭和 23・3・2 基発第 381 号〕
<業として利益を得るの意義>
「業として利益を得る」とは、営利を目的として、同種の行為を反覆継続することをいう。従って 1 回の行為であっても、反覆継続して利益を得る意思があれば充分である。主業として為されると副業として為されるとを関わない。
「利益」とは、手数料、報償金、金銭以外の財物等如何なる名称たるとを問わず、又有形無形なるとを問わない。使用者より利益を得る場合のみに限らず、労働者又は第三者より利益を得る場合をも含む。〔昭和 23・3・2 基発第 381 号〕
<被害者の数>
問 被害労働者が 1 名である場合は「業として」の法第 6 条違反の構成要件を充足するものではないとの見解もあるが、継続反覆して中間搾取をなし被害法益が数個となるから業として行われたものと解して差支えないか。
答 たとえ被害労働者が 1 人であっても、その労働関係継続中に被疑者が十数回にわたり反覆継続的に利益を得ていることは法第 6 条にいう業として利益を得たこととなる。〔昭和 25・6・1 基収第 1477 号〕
<就業>
「就業」とは、労働者が、基準法第 8 条各号の労働関係に入り又はその労働関係にある状態をいう。〔昭和 23・3・2 基発第 381 号〕
<介入>
「他人の就業に介入」するとは、法第 8 条の労働関係の当事者、即ち使用者と労働者の中間に、第三者が介在してその労働関係の開始存続について、媒介又は周旋をなす等その労働関係について、何等かの因果関係を有する関与をなしていることである。職業紹介、労働者の募集、労働者供給事業等の如く労働関係の開始に介在する場合たると、又は保有手当を受ける募集人、繰込手当を受ける納屋頭等の如く労働関係の存続に介在する場合たるとを問わない。〔昭和 23・3・2 基発第 381 号〕
<労働者派遣>
イ 労働基準法第 6 条は「業として他人の就業に介入して利益を得る」ことを禁止しているが、この場合の「他人の就業に介入」するとは、「法第 8 条の労働関係の当事者、即ち使用者と労働者の中間に、第三者が介在して、その労働関係の開始存続において、媒介又は周旋をなす等その労働関係について、何等かの因果関係を有する関与をなしていることである」(昭和 23 年 3 月 2 日付け基発第 381 号)。
労働者派遣については、派遣元と労働者との間の労働契約関係及び派遣先と労働者との間の指揮命令関係を合わせたものが全体として当該労働者の労働関係となるものであり、したがって派遣元による労働者の派遣は、労働関係の外にある第三者が他人の労働関係に介入するものではなく、労働基準法第 6 条の中間搾取に該当しない。
ロ 労働者供給については、供給先と労働者との間に実質的な労働関係があるので、供給元による労働者の供給は、供給先と労働者との労働関係の外にある第三者である供給元が「他人の労働関係に介入する」こととなる。なお、供給元と労働者との間に労働契約関係がある場合については、労働者派遣と同様、供給元は「他人の労働関係に介入」するものではない。〔昭和 61・6・6 基発第 333 号〕
<法律に基いて許される場合>
「法律に基いて許される場合」とは、次に掲げる場合をいう。
一 職業安定法関係
1 法第 32 条第 1 項ただし書の規定により有料職業紹介事業を行う者が、同条第 6 項の規定により労働大臣が定める手数料を受ける場合。
2 法第 37 条の規定により労働者の募集に従事する者が、雇用者から労働大臣の許可を受けた報償金を受ける場合。
二 船員職業安定法関係
法第 45 条第 1 項の規定により船員の募集を行う者が、同条第 2 項の規定による運輸大臣の許可を受けた報酬を受ける場合。
三 右の各場合において、当該手数料、報償金又は報酬以外に利益を受けるときは、法第 6 条に違反する。〔昭和 23・3・2 基発第 381 号、昭和 33・2・13 基発第 90 号〕
<法人の従業者の中間搾取>
問 労働基準法第 6 条は、他人の就業関係に介入して現実に利益を得る行為を禁止し、その違反行為に対しては、法第 118 条の規定により罰則を適用することとしており、利益を常助した者に対する明文の罰則規定がない。
したがって法人が他人の就業に介入して利益を得た場合、可罰対象となるものはあくまで、利益を得た法人自体に限定され、法人の従業者が違反行為を計画し、且つ実行した場合においてもその者が現実に利益を得ていない場合は犯罪行為の主体とすることは適当でないように思料されるが如何。
答 設問の場合については、法人の従業者たる行為者について法第 6 条違反が成立する。
法第 6 条において禁止する行為については、他人の就業に介入して得る利益の帰属主体は、必ずしも、当該行為者には限らないからである。〔昭和 34・2・16 33 基収第 8770 号〕
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